はじめに
本記事は『モンスターハンターワイルズ』(以下『MHWilds』)と比較した『ドラゴンクエストXオンライン』(以下『DQ10』)への批判的な内容を含みます。
閲覧は自己責任でお願いいたします。
前提
- 本記事においては、MHWildsの主人公を「鳥の隊ハンター」、DQ10の主人公を「冒険者」として記述します。
- 筆者はMHWildsのタイトルアップデート第2弾、およびDQ10のVer.7.4ストーリーまでプレイ済みです。記事中に両作のメインストーリーに関する重大なネタバレはありませんが、前述したバージョンまでの内容を含むスクリーンショットを掲載しています。
英雄の終曲 ——DQ10とMHWildsに見る主人公の尊厳——
目次
狩人たちのラプソディ ——ただ純粋にワクワクした——
MHWildsのタイトルアップデート第2弾で、とあるサイドミッションが追加されました。
DQ10で言う「ドレア」や「マイコーデ」にあたる「重ね着装備」のチュートリアル的内容です。
禁足地調査隊「鳥の隊」の加工屋ジェマが他の隊のハンターや加工屋と話す中で、装備構築の柔軟さについて見た目から入ることで考える機会を設けようと思い立ち、隊の加工担当がそれぞれのハンターに着てもらいたい装備を考えて披露する「開け新たなる扉! ウチのハンターに似合うのはこれだ大作戦!」を立案する。
企画立案がジェマなので、鳥の隊ハンターも参加することになり、彼女が指定した重ね着装備を作る、という流れ。
DQ10的に言うなら「ドレア会クエスト」でしょうか?
さて、ジェマは気合いを入れて重ね着を細かく指定してくれました。
しかし私はひとつひとつの部位のデザインをすべて覚えていたワケではなかったので、「きっと組み合わせたらトンチキになって、ほかのハンターの前座として失笑を買う道化ポジションになるんだろうな」と思いながら順番に装備していったのですが……不思議なことに、全部着てみても悪くない。
「この重ね着でどうだろう」とジェマに報告しに行ったら、彼女は「おお…ハンター…いいよ、すごくいい。思った通り、よく似合ってる。ほれぼれするね。」と満足げ。
何か違和感を抱いていると、彼女は「それじゃ僭越ながら、この私が少しだけ色を整えさせてもらいまして…、」と続けて画面が暗転。
着彩設定(カラーリング)を終えてできあがった重ね着が、これ。
あれ? 変な色をつけられなかった。すごくカッコいい。
もしかして鳥の隊ハンターは道化をやらないのか?
期待と困惑の中、出場者が揃い、大作戦のお披露目会が始まりました。
誰も鳥の隊ハンターを笑わない。
いや、それだけじゃない。
誰も誰のことも馬鹿にしない。
「投票の結果、あの人が優勝したんだな」という描写はあるけど、誰が最下位かすら明らかにされなかった……。
おかしい。私はなぜ「主人公は笑われる」「誰かが誰かを馬鹿にする」「最下位として晒し者にする」と思い込んでいたんだ? これは「開け新たなる扉! ウチのハンターに似合うのはこれだ大作戦!」のはずだ。
まもなく思い至りました。
「あぁ、DQ10だ」と。
道化師のインテルメッツォ ——踊れ三枚目——
DQ10は主人公である冒険者がとにかくひたすらイジられます。
あるときは容姿。
あるときは名前。
あるときは服装。
あるときは行動。
あるときは能力。
あるときは存在そのもの。
…………あと何か貶せそうなものありますかね?
そして思い返してみると、これらはVer.1から最新のVer.7まで一貫しています(※ここにはVer.6のスクリーンショットはありませんが、Ver.6では序盤からVer.5での行動を罵倒されます)。
「不思議ちゃんが言った、褒め言葉とセットになった評価」に始まり、「わがままな子どもが言う、具体的すぎて逆に『どこが?』で流せる暴言」と続いて、そこから次第に範囲が広がっていって、それが今に至るまでずっと……となれば、それはまぁ、茹でガエルの理論で「主人公とは小馬鹿にされて笑われる道化」という思考のクセがついてもおかしくありません。
でも違った。
主人公とは、本来英雄なんだ。
無条件に誰からでも愛される存在ではないけれど、こんなに馬鹿にされる必要なんかなかったんだ。
紳士と淑女のシャンソン ——オトナだっていいじゃない——
さらに思いました。
『ドラクエ』が馬鹿にするのって、別に主人公に限った話じゃないな、と。
たとえば、MHWildsの「大作戦」に参加していた彼ら。
おそらく『ドラクエ』に言わせたら、ふたりは「ヒゲのおっさん」と「おばさん」じゃないですか?
ですがMHWildsだと、ふたりは「ロッソ」と「オリヴィア」です。それ以上でもそれ以下でもないいち個人なのです。
だから単色メカニカルコーデで堂々としていても、耽美な装いに柄入り網タイツを合わせても、「イケメンじゃないくせに」とも「おばさんの若作り」とも言われないワケです。
端役のロンド ——あの壁を越えられたら——
突然ですが、DQ10に登場する彼女たちは何歳くらいに見えますか?
数値的な年齢設定はおそらくないので、「未成年っぽい」「何歳くらいの子どもがいそう」といった雰囲気で。
正解……というか、彼女たちの立場ですが、順に「10歳前後らしき子どもがいる未亡人」と「上の子が20歳前後と思しき兄妹の母である王妃」です。
どうでしょう、そう見えましたか?
たぶん見えないと思います。
彼女たちはモデルの素体をプレイヤー規格で作られています。
プレイヤー人間女性のキャラメイクには「歳を重ねた印象にする」という選択肢自体がありません。
「しわを入れる」という項目がないのは男女共通なのでいいとしても、女性は輪郭も「より幼くする」ものしかないのです。
一方、人間男性モデルには「より老けた印象にする輪郭」の選択肢があります。
ですので、「12歳前後と思しき子のいる父」や「叩き上げの兵士長」は、プレイヤー規格モデルでもそれなりに立場すなわち年齢と見合った外見になっています。
なぜこんな形で違いがあるのかはわかりません。
究極まで悪しざまに考えれば、「“おばさん”に利用価値はないが、“おじさん”にはあるから」という推測に行き着きますが、さすがに疑りすぎでしょう。
「フィクションにおいて女の見た目は若いに越したことがない」くらいのものでしょうね。
名脇役のオブリガート ——奏でるは共助の調べ——
ここで、MHWildsからこの人物について。
明らかな「若くない女性」です。かといって、記号的に太っているでも腰が曲がっているでもなく、ただただ「老年である」という事実だけが見えます。
この容姿、単に「おばあさん」というよりも、「綺麗な歳の取り方」と感じませんか?
前述したオリヴィアもそうですね。
そして今からひどいことを言いますが、オリヴィアは別に「美人」じゃないと思います。
CG的で化粧映えする滑らかな肌でもありませんし、性的魅力を誇示する露出もありません。
ただ、それを含めて「聡明で頼れる女傑」的な魅力があるのです。
フィクションにおいて年齢を重ねた女性は、見た目が実年齢不相応に露骨な若さでないかぎり、どんな個性があっても「ババア」と年齢でひと括りに呼ばれる風潮がありますね。
では、なぜオリヴィアは「ババア」とか「ハンマーおばさん」とかの蔑称すれすれの愛称ではなく、「オリヴィアさん」とさん付けで呼ばれて慕われているのか?
そんなもんカッコイイからですよ。
“個人”に魅力があれば、年齢だの性別だの全部どうでもいいのです。
残念ながら、「フィクションにおいて女の見た目は若いに越したことがない」という価値観は未だ根強く残っています。
かといって「だから若くない女の魅力なんか描く必要はないよね」なんてキャラ構築をしていたら、そりゃあ「若くないし魅力もない。ならただのおばさんだ」としか受け取られず、「つまり皆おばさんの魅力になんか興味がないんだから描かなくていいよね」と無限ループして、構造は永遠に変わりません。
「とにかく魅力を描く」を真剣にやれば、「若くないから何だ、こんなに魅力的じゃないか」になるものなのです。
オリヴィアはそれを証明した人物だと思います。
とはいえ、MHWildsが「年齢蔑視」の鎖をすべて引きちぎったかというと、そうとも言えません。
公式グラフィックや初期プリセットの男性ハンターは「おじさん」ですが、女性は「おばさん」ではないからです。
実際、あえて「年齢を重ねた女性ハンター」にキャラメイクしているプレイヤーもほとんど見かけません。
それに、もし女性ハンターの初期プリセットが男性ハンターと同じくらい年齢を感じる容姿だったら、おそらく一部のプレイヤーは「モンハンが“多様性”の圧に屈した」と断じたと思います。
オリヴィアは「サポートハンター」という名脇役だからこそ、こんにちにおいてもこれほど受け入れられて輝いたのでしょうね。
英雄のノクターン ——大自然の安らぎ——
「開け新たなる扉! ウチのハンターに似合うのはこれだ大作戦!」のお披露目会は、明確に「センスを競う場」でありながら、誰ひとり馬鹿にされず、全員の在り方が尊重されました。
落ち着いた無骨さのパンクファッションも、正統派な清楚かわいい系も、単色メカニカルコーデも、耽美な貴婦人風も、すべて「その人の新しい扉を開いた姿」であり、等しく尊敬の対象でした。
「進むべき道を進んでいるだけでなぜか軽視される」が常態化していた身には、あの時間はあまりにも優しすぎた。
あれもまた、美しき世界の理だったのでしょうね。
…………いや、ちょっと待て。
なんてことだ、別に何でもない普段から自然に尊重されていた。
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