はじめに
「モンハンプレイヤーはWorld受付嬢の何がそんなに気に食わなかったのか」を論じる動画に、ちょっと長文で誇張を交えたコメントを書いたら、「きつ」と冷笑されました。
だったら、「きつ」い誇張は抜きにして大真面目に論じますよ、ただしそのぶん文字数は跳ね上がりますけどね。
発端はそれだけです。
前提
- 筆者の受付嬢に対する評価は「そこそこの頻度でざわざわするので心から積極的に『相棒!』と呼べるほどの名キャラではないが、顔も見たくないとか声も聞きたくないとかの劣悪キャラでも別にない」です。よって本ページの内容は、「ウケツケジョーをボロカスに叩いている文章を読みたい」、「受付嬢の功績を正当に評価して擁護する文章が読みたい」、どちらのニーズにも完全には合致していません。
- 筆者はWorld:IBのミラボレアス戦を経験していません。アルバトリオンに勝てなくて同作を引退したからです。そのため、受付嬢がミラボレアス戦でどんな活躍をしたのかも知りません。
受付嬢はなぜ「ウケツケジョー」と呼ばれたのか
目次
相棒型ヒロインの失敗 ——それをどこまで責めるべきか——
私はWorldのプレイ直前くらいに、史上最低レベルと言っていい「相棒型ヒロインの失敗」を見ています。
実際の名前を出すのもアレなので、公式のエイプリルフールイベントで名乗っていた源氏名の「ユーリンチー」としましょう。
「前提」で受付嬢に対して「顔も見たくないとか声も聞きたくないとかいうほどではない」と言いましたが、私はユーリンチーの顔も見たくないし声も聞きたくないです。
別に不美人なわけではありません、むしろ美人なほうでしょう。声も聞くに耐えない声質ではまるでありませんし、口調や話しぶりだって妙なクセがあるでもないただの丁寧語です。モンハンプレイヤーなら「フィオレーネと同じ声」と言えば通じるでしょうから、聞き苦しい声質では決してないことがわかると思います。
にもかかわらず、ユーリンチーは顔も見たくないし声も聞きたくないです。彼女はそれほど大失敗した相棒型ヒロインだったのです。
さて、直近にそれを見ているがゆえに、私は受付嬢に対する評価がかなり甘くなっているフシがあり、それは自覚しています。
Worldでは下位オドガロンの展開(もはや私が長々語るまでもないフィールドマスターとの件)があってなお、「あぁ皆が言っているのはこういうところか……まぁ、うん、ユーリンチーよりはマシか……」と思っていました。
誰もが槍玉に挙げる「やりましたね、私達」も、どんなおぞましい使われ方をするのかと思ったら普通に文字どおりの意味で、このくらい「まぁ……ハンターと編纂者はバディなんだから『私達』ではあるか」で済ませられます。「実はあなたが今も生きているのはかつてユーリンチーが助けたから。つまりあなたが生きて成してきたことはすべてあなたを助けてあげたユーリンチーの功績」をやられたあとでは、受付嬢が「私ひとりでやりました!」と言い張ってそれを大団長や総司令すら一切疑わないくらいでないとキレようもありません。
……ただ、さすがに下位リオレウスは「ちょっと待て」と思いました。
リオレウスは主人公にとっても受付嬢にとっても既知のモンスターであり、また「生態系の頂点」にふさわしく危険度の高い種です。にもかかわらず受付嬢が防御や回避のための行動を何も取らなかったかのように描くのは、批判を招いても仕方がないと感じます。
リオレウスと遭遇した時点で物陰に隠れて、防戦一方の主人公に「相棒、こっちです!」と逃げ道を示すような描写だったなら、非戦闘員という役割や一度逃げるという行動でももっと印象が変わったのではないかと今でも思います。
だから、かなり甘い評価をしている私ですら、受付嬢に対してひっかかる点があるというのは事実だと思うし、理解もできます。
ですがそのうえで、「そこまで言わなくてもいいのではないか」と思うことのほうが多かったんです。
さすがに言っていいことと悪いことがないか?
その表現を打ち込んで送信する前に1秒でも考えなかったか?
もはや「ただ暴言を吐きたいだけ」で言っていないか?
そう感じる叩きがあまりにも多くてつらかったです。
思うことや感じ方は、誰ものすべてが自由です。ですがそれを言葉にするのなら、それもインターネットすなわち全世界に向けて発信するのなら、1秒でいいから「それを言ってもいいかどうか」を考えるべきでしょう。
ということで、1秒と言わず数日間考えてまとめました、受付嬢がなぜ「ウケツケジョー」と呼ばれたのか。
以下、システム面、キャラクター面、その後の影響、同じ“編纂者”であるアルマとの対比の4点から、受付嬢がなぜプレイヤーをこれほど「暴力的なまでの叩き」に駆り立てる存在になってしまったのかを考えます。
システム面において ——あなたの役目を聞かせて——
受付嬢は「主人公の専属編纂者として、その狩猟に付かず離れずで同行し、リアルタイムで記録を取る人物」……のはずでした。
当時の技術では、「『そこにいたら戦闘に巻き込まれるだろう』という違和感や心配をプレイヤーに抱かせない位置に非戦闘員を配置する」ということができなかったのか、受付嬢は基本的に完全な安全地帯であるキャンプから出ることはありません。
しかも「待機させたはいいものの、ただ突っ立っているのは不自然だろう」と考えられたのか、「椅子に座って編纂書の内容を確認する」「アイテムボックスを覗き込んで何か取り出すような仕草をする」「主人公が力尽きてキャンプに強制送還されたときには、明確に定位置から身を乗り出して心配そうに様子をうかがう」など、待機中のモーションが作り込まれました。
それがかえって「ずっと安全地帯にいるだけで、何をしているのかわからない」という評価につながったのだと思います。
当時の技術的に可能だったかはわかりませんが、「主人公がどんな形であれキャンプに戻ったときには、その直後には誰もおらず、あとからカメラワークでごまかして受付嬢を翼竜で合流させる」とすれば、少なくとも「安全地帯から一歩も出ないくせに」という批判は抑えられたと思います。
存在させると違和感を招くのなら、いっそいないものとして扱ってしまえばいい。主人公が狩猟している間、受付嬢がその周囲のどこにも姿が見えないのと同じように。
また、World:IBで勝気な推薦組が一時的に主人公のパートナーとなった際、彼女は「次の任務ターゲットは過去の事例によるとこんな生態」「調査員がこういった攻撃を受けた」と「プレイヤーの利になる台詞」を言う傾向がありました。
対して受付嬢は「クシャルダオラは代表的な古龍とも言われる存在、それが新大陸で目撃されるとは」といった世界観的な設定や、「まだ帰れない、まだ……」といった自分の意見を発言することが多いです。それらの台詞は世界観や彼女の考え方を掘り下げるものですが「プレイヤーの利」にはなりません。
勝気な推薦組と受付嬢を比較した「勝気な推薦組のほうが頼りになる、ずっとパートナーでいてほしい」という発言は、おそらくそういった要素からもきているのでしょう。
つまり受付嬢は、システム的存在として「何のためにここにいるのか」がどうにもわかりづらい。
キャラクター面において ——「冷静な推薦組」と「活発な推薦組」——
主人公は「調査団への迅速な合流よりも優先されるようなギルドの任務についていたため、5期団全体の新大陸への出港予定が危ぶまれさえした、調査の『期待の星』であるハンター」です。
一方で受付嬢は「快活な性格で調査に前のめり、何にもへこたれないタフでアクティブな編纂者」です。
勝気な推薦組や陽気な推薦組に倣うなら、両名はおそらく周囲から「冷静な推薦組」と「活発な推薦組」と認識される人物でしょう。
どちらの設定が先だったのかはわかりません。
しかし、おそらくこの設定がすべての悲劇の元凶です。
「モンスターの脅威を描くためには大なり小なりトラブルが必要だが、主人公は『冷静で優秀なハンター』だから、下手なトラブル展開をさせられない」という形で、主人公の設定が足枷になったのでしょう。「モンスター絡みのトラブルに見舞われる」という役割は「主人公と行動を共にする、調査に前のめりな人物」の受付嬢が担うことになり、その前提として「活発を通り越して迂闊や軽率な行動」が付随してきました。
その結果、プレイヤーの分身である主人公は「自分が発端ではないトラブルを冷静に洞察して行動することで、トラブルの発端を助けながら自分も危機を脱する」という要素がどんどん強化されていき、それに比例して受付嬢は「トラブルの引き金となるが、それをすべて主人公に解決してもらう」という結果が蓄積していきます。
さらに「モンスターの脅威を描くためにはトラブルが必須級であり、受付嬢が一度の失敗で行動を改めてしまうとその後のトラブルの起点を作りづらい」という思惑があったのか、彼女が「自分の行動を鑑みて真摯に反省する」という展開は描かれず、二度、三度とトラブルの発端役を引き受け続け、それでいて反省もしないことになります。
もしかすると「へこたれない」と「反省しない」を意図的か無意識にか混同していたのかもしれません。
ともかくこの「反省しない」が前述のシステム面と最悪の形で噛み合い、「主人公(=プレイヤー)はこんなに優秀なのに、受付嬢はシステム面では安全地帯から一歩も出ないし、ストーリーではトラブルの発端になるうえ、反省して謝罪することもなくまたトラブルの発端になる、いっそいないほうがストレスフリーなキャラクター」という多くのプレイヤーからの最終的な評価が定まってしまったのだと思います。
受付嬢がもたらしたもの ——焼き直された「団子」「パン」「土偶」——
私はプレイ歴が浅いので、モンハンシリーズの制作事情にそこまで詳しいわけではありません。
ただ、シリーズの中でも系統として今は「World系列」と「Rise(X)系列」の二派があること、それがおおむね「対応ハード」で区分されているらしいことは知っています。
そして系列名に冠されたRiseにおいて、里の受付嬢ヒノエには受付嬢と同じ「健啖家」という属性が与えられました。
しかしRise:SBにおいて、ヒノエの健啖家属性は「主人公が今後どこか遠くへ行ってしまう日が来たら、どこであっても訪ねていく(それが故郷カムラの里の特産品である大好物『うさ団子』を食べられない場所だとしても)」という主人公への厚い信頼に昇華されています。
ヒノエの「健啖家」は単なる「属性・個性」には留まりませんでした。
Rise:SBで登場する王国騎士フィオレーネは、ストーリーにおける実質的な「主人公の相棒」ポジションであり、ときにその狩猟にも同行する点は受付嬢と同じです。
しかし「同行して実際に何をしているのか」が直接的に描かれなかったために批判を招いてしまった受付嬢と異なり、「同じ戦闘員として共にモンスターに立ち向かううえ、盟勇としての戦闘AIまで優秀で頼りになる」と同行理由や存在意義が明確で、多くのプレイヤーから称賛・歓迎されました。
そして「World系列」のWildsでは、主人公と同隊の編纂者であるアルマは、機動力が高く危機回避に長けたセクレトに騎乗することで、設定のみならずゲーム画面上でも主人公の狩猟に付かず離れずで同行しているため、「主人公の狩猟をリアルタイムで記録している」ことが説得力を持っています。
彼女については同じ「World系列」の「編纂者」であることから、次項でもうすこし詳しく論じます。
理想のパートナーとは ——「鳥の隊」に見る編纂者のかたち——
前述のとおり、アルマは明確に「主人公の狩猟に付かず離れずで同行」しています。また、Wildsではクエスト開始時にアルマが「ギルドの要請により、本任務を開始します」や「ギルドの承認を確認、対象の狩猟を開始してください」などの狩猟許可の宣言をすることが基本になっています。そして非戦闘時には、フックスリンガーを用いて植物などの手近な素材を採取してくれることがあり、明確に「プレイヤーの利」となる行動を取ります。
キャラクターやストーリーを度外視したシステム面だけでも「安全地帯にただいるだけ」という誤解を防いでおり、「編纂者という人物が何をするのか」が明確になっているのみならず、世界観やストーリーには関心がないプレイヤーの「ただ狩猟に役立ってほしい」というニーズまで満たしているのです。
キャラクター面では、受付嬢が快活な人物であるのに対し、アルマは思慮深い人物です。
狩猟中は戦闘に巻き込まれないためセクレトを駆って縦横に走り回りますが、ムービー中で主人公に先行するのは「現地住民とやりとりをする」など戦闘にならないことがほぼ確定的な場面のみで、フィールド移動パートで先行する際は「道案内役をセクレトに同乗させている」など、基本的にそうする必然性があります。
不安定な環境の移動中に主人公が危険を察知して制止すれば、アルマは必ず彼/彼女より後ろで止まり、セクレトから下りるのも主人公が戦闘に入れる状態を確保してからか、あるいはそもそも下りません。
これらは自分が非戦闘員であることを心得ているふるまいであり、調査に前のめりゆえ主人公の制止を振り切って飛び出してしまうことさえあった受付嬢とは真逆の対応と言えます。
アルマのふるまいとキャラクター性には、Wildsの重要人物であるナタの存在が関わっていると思います。
故郷を“白の孤影”に襲われてただひとり逃げ延びたナタは、ストーリー開始当初は主人公にさえどこか警戒した様子を見せていますが、ムービーでの描写や主人公との会話から、アルマには心を開いているらしいことが窺えます。
そして、セクレトでの移動中には、アルマは自身の鞍の後ろにナタを同乗させていることが多いので、アルマの「主人公より前に出ない」「セクレトから下りない」という行動は「同行者であるナタの安全を守る」という他者への配慮と間接的に結びつきます。
これらの複合的な要因によって、アルマはプレイヤーからの評価も「主人公(=プレイヤー)を立て、思慮深く、かつ優しい人物」という高いものになったのだと思います。
つまり彼女は「何」だった? ——2018年の「限界」——
受付嬢は「早すぎたキャラクター」だったように思います。
繰り返しになりますが、せめて「実際に狩猟に同行している」ことを画面上で認識できる表現がなされていれば、少なくとも「安全地帯から一歩も出ないくせに」という批判や、それに付随するキャンプ待機中のふるまいへの不満だけは、確実に抑えられたはずです。
盟勇やサポートハンターのシステムを応用して、「徒歩で同行している非戦闘員なので、基本的には戦闘エリアの端のほうで編纂書片手に身を潜めているが、ごくまれにモンスターが彼女に目を留めることがあり、そのときはスリンガーでひるませて自衛する」とすれば、「ただ狩猟に役立ってほしい」というニーズもあるていど満たせるかもしれません(タゲが分散するから下がってろと言われるかもしれませんが)。
彼女をまっとうに描くには、システム的にもキャラクター的にも「技術」が足りなかった。
受付嬢はもはやインターネット上で「いくらでも叩いていいキャラクター」として固定されてしまったように思います。
その扱いたるや「彼女の言行を批判するためならどんな言葉でも使っていいサンドバッグ」です。
だからそのキャラクター造形について論じた動画に彼女を擁護するコメントをしても、「いや」と否定から入られたり「きつ」と一言で切り捨てられたりするのでしょう。
「受付嬢は、もうどうにもならない。ただ制作の犠牲と、次回作以降の糧になった」。
これがおそらく、2025年現在において彼女を取り巻く状況のすべてなのだと思います。
原作プレイ感想:World、World:IB、Rise、Rise:SB、Wilds
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